モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

レアなのは何か

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1303/13/news003.html 「時給800円と8万円‐仕事をしていてなぜ100倍も差がつくのか」という記事がありました。

マクドナルドのバイトの時給は800円、マッキンゼーのシニアコンサルタントの時給は8万円、どちらも大変なのになぜ100倍も差がついてしまうのか、というお話です。藤原さんは、「レアであるか」どうかがその要因だと言います。

レアになるための方法として、「ハイリスクハイリターンな選択をする」、または「100人に一人のスキルを二つ組み合わせて10000人に一人のレアなスキルにする」、といった提案がなされています。

「レアであるか」が時給の決定要因である、という指摘は同意ですが、「レアな」の次にくる被修飾語が、私の考えとは違いました。藤原さんは「レアな」『人材』または『スキル』には金が集まるという考えでしたが、僕は「レアな」『ポジション』に金が集まる、と思っています。

例えば、鼻でスパゲティを食べながら逆立ちをするというスキルは100000人に一人のスキル(かそれ以上)だと思いますが、そのスキル自体はレアでもすぐにはお金は集まってきません。

ライアーズポーカーの時も書きましたが、その人が優秀だということ(つまりレアなスキルを持っているかどうか)は飽くまで二次的な要因であり、レアなポジションにつけたか、というのが収入に決定的な影響を与えるのです。

マッキンゼーのシニアコンサルタントには莫大な給料が入ります。大企業の社長職につけば寝てたって大金が入ってきます。それは彼らの能力が100倍優れているからなのではなく、ただ単に100倍稼げるポジションだからです。シニアコンサルタントの彼、社長の彼、がすごいのではなく、莫大な金が入るこの仕組みを構築した人が物凄いのです。

コンサルタントだろうが銀行員だろうがトップが超ド級の天才でないと、ならないなんてことはありません。総理大臣だって誰がなったって同じだと皆さん思っているでしょう?それと同じ。組織は当たり前のことが当たり前にできる人が一定数いれば成り立つように構造化されています。一握りの天才がいないと成り立たない会社は一代で潰れていますから。

給料の高い仕事は別に特別に高いスキルや能力がなくたって出来るのです。マクドナルドでアルバイトチーフをやってのけるだけのスキルがあれば十分です。でも、マクドナルドの時給が安いのは、たくさんポジションがあり希少性が低く倍率が低いから。マッキンゼーのシニアコンサルタントの時給が高いのはポジションが少なく倍率が高いから。倍率が高いから、他の人を出し抜くような能力が必要で、結果的に高いスキルを求められてしまうのです。

だからマッキンゼーのシニアコンサルタント的な高給ポジションを目指すのであれば、他の競争者と同じ土俵で、同じ能力で真っ向から勝負して勝たねばなりません。鼻スパゲティと逆立ちを組み合わせても土俵に上がれません。土俵に上がったところでお手つきで負けです。そこは血みどろの死臭ただよう戦場なのです。

鼻スパと逆立ちを組み合わせたレアなスキルで目指すのは「新たなポジション」の創造です。馬鹿でも楽して稼げる新規分野を開拓することです。まだ、誰も手をつけていない入れ食いの穴場を見つけることです。鼻でスパゲティを食べながら逆立ちをする人に金を払いたくてしょうがない人との運命的なめぐり逢いです。そうすれば、たいした能力がなくても、美味しいレアなポジションを手に入れることが出来るでしょう。いま高給をもらっているコンサルタント投資銀行も、かつては奇特なスキルを持った人だけがやっている意味不明の職業だったに違いありません。それが運命的なめぐり逢いを経て、実績を積み重ねて、市民権を得て、「誰にでも出来る」「儲かる」仕事へと変遷していったのです。今では立派なレッドオーシャンです。

つまり、せっかくレアなスキルを組み合わせることが出来るなら、既存の血みどろの戦場に行くのではなく、新しい市場でゆるーく億万長者を目指したいよね、ということを言いたかったのです。