モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

広瀬すずさんの発言に潜むより深い問題について

「食わず嫌い」での広瀬すずの発言が話題を呼ぶ、炎上、謝罪にまで発展しました。 彼女の発言については色んなところで考察されています。

http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/20/hirose-suzu-apologizes_n_7626648.html http://fujipon.hatenablog.com/entry/2015/06/22/175829 http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/23/hikaru-ijuin-suzu-hirose_n_7642004.html

発言→炎上→謝罪→「まぁ良いじゃないか若いんだから」 という一連の流れを見ていて、本当に問題にすべきは広瀬すずの発言内容そのものではなくて、それに過敏に反応する大人たちが一定数以上いたという事実なのでは、と思うのです。

まず、発言の前後関係を見ても、別に職業蔑視の意味を持った言葉ではないことがわかります。ただ色んなことに疑問を持つ性格で、まだまだいろんなことを知らないし、知りたい。そんな中「裏方に徹する人の気持ちが分からない」というのは当然の気持ちです。だって17歳だから。「自分だってそうだったよ。陽の当たる場所に立ちたいと思ってたし、裏方の価値なんてわからなかった。だって見えないんだから。だんだんとわかってくるよ、ふふふ」と、今はそう考える人が主流のはず。だから騒動は収まった。

この発言はなぜ放送されたのか、本当に問題だったらカットされても良かったのでは?答えは簡単。まさにテレビの裏方の方達が上記の思考をお持ちだったからです。「そういうこともあるよね、でも大人は誇りをもってこの仕事をしてるんだ、ふふふ」というお気持ちで、華麗に受け流されたに違いない。

でも世間は違いました。この発言を曲解し、悪意に包み、17歳の少女の心を炎上させる燃料としました。なんでこんなことになったのか。上記のような考えを持ち、自分の地味な仕事にプライドを持っている大人はそんなことしない。とすると誰が炎上させたのだ??この答えも簡単。「自分の仕事にプライドを持てない、裏方に徹して燻っている、歳だけとって、相手の揚げ足取りだけを生きがいにする人間」が炎上させたのです。彼らが少女に本当のことを指摘され深くキズつき、呪詛の言葉で少女を痛めつける行動に出ました。

これは非常に悲しい現実です。彼らは毎日「なんでおれこんなことやってんだろ」「こんなことするためにうまれたんじゃないのに」と思いながら仕事をしているのです。自分の仕事の価値を自分で見いだせないまま腐っているのです。そんな時分に、華やかな世界で、煌びやかに生きる若手女優から「私は分からないのですが、あなたの仕事って楽しいですか?」と問われてしまった。彼らは「楽しいわけねぇだろ」「俺の辛さがおまえにわかってたまるか」という形でしか応答できません。だって、本当につまんないだから。なんでこんなことやっているのか自分で納得できていないんだから。

そんな人生を送っている人たちが少女を炎上させるほど一定数の層をなしているという現実こそが現代社会に潜む大きな問題だと思うのです。我々が取り組まなくてはいけないことは少女の言葉を擁護することでも、裏方の仕事にスポットライトを当てることでもなく、彼らに誇りを持った生き方をしてもらうことなんじゃないかしら。

仕事はつまんねぇし、やりたくないことばっかりだし、周りのやつは楽しそうだし、自分だけ何もかもうまくいかない、私だってそう思うことは(よく)ある。でも歯を食いしばって生きていかなきゃいけない。周りに呪いの言葉を吐くぐらいなら、死んだほうが良い。それだけが残されたPrideだと思う。この歌を聴いてそう思う。