モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

インド旅行紀2日目

インドと日本の時差は4時間半。飛行中も寝続けており、身体時計は既に日本の時間からはずれていたため、インド時間の朝7時に目を覚ますことが出来た。昨夜は高熱が出ていた気がするが、今朝は熱が下がった気がする・・・。 病み上がりの独特な倦怠感は残りつつも、外へ出かけることにした。 ホテルはニューデリー駅から徒歩5分ほどの繁華街にあったため、とりあえず駅へ歩いて向かうことに。旅程は、かちっと決めていた訳ではないが、大きな移動は日本から航空券を予約していた。この日は29日。ムンバイから日本へ帰る便は5月3日の深夜。ジョードプルからムンバイへの飛行機が5月2日の昼13時。 日本へは4日のうちに帰りたかった。というのも、帰国後体調を崩し寝込むことが目に見えていたから。日本に帰って2日ゆっくりして社会生活に戻る予定だった。だが、4日に関空へ帰る便はムンバイからしか取れなかったため、今回のインド旅行はデリーINムンバイOUTの旅程となった。デリーからムンバイへ移動しながら観光するとして、どうしても寄りたい場所があった。それが、タージマハルのあるアグラとブルーシティと呼ばれる砂漠の町ジョードプルだったのである。それぞれの街の距離感を何も知らないまま、とりあえず日本でジョードプルからムンバイまでの飛行機だけ予約していたのである。 とりあえずの目標は2日の昼までにジョードプルにいることである。それまでにアグラへ行き、タージマハルを見たい。 そう思い、デリー駅でアグラ行きの電車のチケットを買うことにした。ホテルを出ると、丁度昨日一緒にホテルにきたW君も駅へ向かうところだと言う。始めてのインドでお互い心細かったので一緒にいくことにした。 さすがはインド、歩いているだけで、いろんな人が話しかけてくる。ほとんどがタクシーのドライバーだ。英語は達者なのだが、発音が独特でなかなか聴き取れない・・・Rをはっきりと発音し、Eをアと発音するのが特徴の様だ。ウェアイズエレファント?という文はウェルイズアレファン?となる。これも出身地や個人別に特色があるのだろうけども、インドを旅して分かった特徴がこの2点だけだったということだ。とにかく聴き取りずらいから辛い。 駅は古い平屋から大きなホームなど沢山の建物が連なった形をしているのだが、外国人用窓口がどこにあるのか分かりずらい。事前にネットで、「二階にあるため、見つけずらい。いろんな観光関連の人たちが手練手管を用いて、自分の旅行社から予約させようとしてくるので、気をつけよ。彼らを無視して二階にあがるべし」との情報を手にしていたので、注意深く捜し歩いた。大きなプラットホームを擁した建物の前に来ると、一人のドライバーが乗らないか、と声をかけてきた。「いや、今は必要ない」と一蹴すると、「何を探しているんだ」と親切に声をかけてきた。「外国人のチケット窓口を探している」というと、大きく手を伸ばし、あっちだと建物に対して右側の二階を指差した。「あっちだよ、マイフレンド。いいかい?ここを右へ進んで、あっちの二階だ!」とタクシーのドライバーが笑顔で教えてくれた。さすが観光大国インドである。道に迷った観光客をすすんで助けてくれる文化がここにあるのだ。それにしても、こんなに身体をはって道を指し示してくれるとはなんというナイスガイなのだろう。僕は嬉しくなって、笑顔でお礼を継げ、彼の指し示す方角へ歩いて行った。 一番大きな駅の建物でいかにも窓口がありそうにみえたが、入口に金属探知機や手荷物検査用のベルコンベヤーなど重厚なチェックポイントがあった。そして、そこに男が立っており、中に入ろうとすると「チケットはもっているのか?」と聞いてくる。「いや、持っていない。ここで買いたいのだが」と言うと、入口付近から外へ連れ出され「チケットはここでは買えない。ここからリキシャーに乗って、コンノートプレイスというところへ行け。そこにDTTCという政府の観光局がある。そこでチケットを買うしかない。駅のチケット売り場は2010年で閉鎖されたのだ。ガイドブックを持ってるか、そうだ、地図だ。ここだ。ここがコンノートプレイスのDTTCだ。リキシャーを連れてきてやる」とインディアンイングリッシュでまくしたててくる・・・ うむ?ここで僕とW君は異変に気付いた。これって、ネットでみた手口だなぁ。駅のチケット売り場は閉鎖されたから、旅行代理店へ行け、ってよくある手口と書いてあった気がする。ちょっと考えてみれば、駅中のチケット売り場が閉鎖されるなんてことありえない。そして、あんなに厳重な荷物検査の前に立っていた男が、観光客二人のためにもう10分近く時間を割いているのに、入口ではスムーズな出入りがなされているのもオカシイ。・・・・分かった・・・こいつは駅員でも何でもなく、入口にいて観光客を騙すことを仕事にしている奴なのだ!危なかった、完全に雰囲気に呑まれていた。駅の入り口に立って「チケットはもっているのか?」と厳しい口調で追及してくる人=駅員、と日本の常識をあてはめてしまっていた。こういう手口で観光客を導いていたのか…インドで初ビックリであった。 彼を無視し、建物の中に入る。手荷物チェックポイントも別に誰も何もしておらず、スルー。階段を上がると、ものすごい人ごみのプラットホームを横断する歩道橋だった。 ニセモノ 人ごみをかき分けながら外国人窓口を探す。いつもデリー駅はこれほど混雑しているのだろうか。通勤というより、家族旅行という風情の乗客が多いような気がした。どうやらインドもこの時期はバカンスシーズンらしい。 人ごみを抜け駅の反対側についたものの、外国人窓口はどこにも見当たらない。近くにいた駅員らしき人(通常窓口の中にいた人なので本物の駅員に違いない)に聞くと、駅の反対側だよ、と言う。 せっかくあの人ごみを抜けたのに・・・完全に無駄足であった。再び来た道をもどるが、どこにも外国人窓口がない。戻る戻る。手荷物検査の入り口も出る。どこだ・・・?最初の親切なおっちゃんはこっちって言ったけどなぁとW君と首をかしげながら歩いていると、ついに看板を見つけた!しかもその場所は、あの親切なおっちゃんが「向こうだよ、この向こう!」とオーバーアクションをしていた、その目の前だったのだ。あのおっちゃんは、自分に何のメリットもないにもかかわらず、ただ我々に無駄な時間を使わせるためだけにオーバーアクションでわざと違う道を指し示したのである。一体、何のために・・・・?!!タクシーの利用を断った、我々への腹いせのため・・・それ以外何もない・・・。インドで二度目のビックリだった。何の意味もない嘘をつく人・・・。 かくして、外国人窓口へ着いたものの、そこは外国人旅行者で長蛇の列が出来ており、W君とゆっくりおしゃべりしながら30分ほど順番を待った。白人や日本人、いろんな国籍の旅慣れた若者がいた。 順番が回ってきた。出来るだけ早くデリーを離れ、アグラへ行きたい。今日か明日、アグラ行きの電車はあるかと聞くと13時発の電車があいているという。しかも331ルピー!ほんの500円だ!枚方から梅田より安い! 即決し、お金を払おうと100ルピーを4枚渡すが、これまたビックリお釣りがないという。 331ルピーに対して1000ルピー払ってお釣りがない、ならまだ分からないでもないが、400ルピーでお釣りがないなら、もう払いようがないじゃないか。仕方がないので、一度街へ出て、お金を崩すことに。W君はジャイプール行きのチケットを買おうとしたところでお釣りがないと断られたらしく、一緒に外へ出る。僕はバザールJへ、W君はホテルでお金を崩すと言い、彼と別れた。彼の旅も無事で終わりますように・・・。 バザールはタイのカオサンやイスタンブールのブランドバザールの様に雑多な店が並んでいる訳ではなく、煙草屋、薬局、服屋のみで構成されていた。はっきり言って、観るほどのものはない!ハブラシと歯磨き粉を買ってお金を崩し、お釣りをつかって鉄道チケットの支払いを終えた。 13時の出発までにまだ3時間以上ある。とりあえず、デリーで観光をしようと街歩き開始。ジャマーマスジットというイスラーム寺院を目指すことに。歩いているとリキシャーの運ちゃんが声をかけてくるので交渉をしてみるが100ルピーなど吹っかけてくる。「土曜日はそこは開いてないから別の店に連れてってやるから50ルピーにまけてやる」など訳のわからない交渉をしてくるのもいる。まぁ、行けないのならそれも良い。とにかく歩きまわってみようと、リキシャを断って歩いていると、「リキシャよりも歩いた方が楽しいよな」と声をかけてくるオッサンがいた。 カモにしてくる商売人と違い、一般人っぽい匂いがした。並行して歩きながら、どこへいくの?と尋ねてくる。 「なんの予定もない」と言うと「DTTCという政府の観光局に行けばとりあえずタダで地図をくれるから、そこへ行くといい」とアドバイスをくれる。「外国人が交渉するとふっかけてくるから、俺が安く乗せてやるよ」とリキシャを捕まえて20ルピーで乗せてくれることになった。地図にのっているDTTCに場所を指し示し、いざ出発。 10分ほどで着く。「ここがDTTCだ。な?DTTCって書いてあるだろ?ストリートの名前も同じだろ?な?」と怪しい確認をし、去っていった。 自分が何をしたいのか判らないまま中に入ると、個室に案内され旅の予定を聞かれる。 アグラへ行き、ジャイプールへ行き、ジョードプルへ行き、飛行機に乗りムンバイへ行くと告げると、DTTCの職員らしき人は「それはまずい!あなたの旅は移動ばかりになっちゃうよ!すぐに飛行機と鉄道をキャンセルしなさい!うちがミニバスで全部連れて行ってやるよ!移動費宿泊費全部込みで4万円でいいよね?さぁすぐ出発しましょう」と強引に勧誘してくる。ただ地図をくれ、と言ってもくれない。なんだか違和感をぬぐえなかったので、彼の言葉を無視し、店を出る。 コンノートプレイスが近いので、とりあえず鉄道の時間までそこで時間を潰そうと歩くが、どうも地図上のDTTCとコンノートプレイスの位置関係が合わない・・・そこから導き出される結論は一つ、僕がいたのはこのDTTCではない、ということ。首をかしげながら歩いている、またオッサンに話しかけられる(インドの話しかけられる率は異常) 「どっから来た?ネパール人か?ひまか?俺は暇なんだ。チャイでも飲もう」とおっさんにナンパされた。オッサンが男をナンパするのって何と呼ぶのだろう。男が女を誘うのがナンパ。女が男を誘うのが逆ナン。なら男が男を誘うのは裏ナンかしら。とか思いながら、彼のオススメのチャイ店へ向かう。すぐ近くだというが、建設現場の中を通ったり、ぐちゃぐちゃの廃墟をくぐったり、かなり不安な気持ちになりながら何も知らないオッサンについていく。 無事に喫茶店のようなボロボロの店につき、チャイを飲む・・・。オッサンと他愛のない会話が続く、兄弟は何人だとかどんな仕事をしているのか、とか日本とインドどっちが暑いかとか、DTTCのことも聞いてみた。「DTTCって看板のあるとこいったんだけど、何か怪しかった・・・」。「あぁ、DTTCっていっぱいあんだよ。本当の政府のところは一つしかないけど、君がいたところは違うよ」とオッサン!なに・・・やっぱりイカサマだったんだな。ってかインドってイカサマしかないな、ほんと。「それじゃあ、ほんとのDTTCにつれてってやる」とオッサン。 そのまま連れられてDTTCへ。確かにさっきのところとは違う・・・。 インドというところは勝手に物事が進んでいく、自分はやれやれと受動的になっていても、事が進んでいく。それはまるで萌えアニメの主人公の様に・・・・(相手はオッサンだけど) DTTCに入ると、日本語の達者なでかいオッサンが迎えてくれた。「ここがホントのDTTCですよ。DTTCの名前を使って色んな代理店が出店しているんですよ」と超流暢な日本語を見せつけられて、すっかり安心してしまった。先ほどと同じようにインド旅行のおおまかな日程をオッサンに説明すると「今の時期は電車すごい混んでるから、アグラからジャイプール、ジャイプールからジョードプルまでの鉄道なんて取れないよ!ほら、もう満員だ」とネットの予約状況を見せてくれた。その情報がどこまで確かなのかも怪しいし、外国人用に別の枠があることもしっていた。怪しんでいるところで彼が言う「こちらがミニバスを用意しますから、すぐに出発してください。鉄道チケットはうちが買い取ります。ミニバスで道程が同じ人と一緒に旅をしてください。今のままでは移動ばっかりで時間をつかってしまいますよ。しかもインドの鉄道は3,4時間遅れるのが当たり前なので、あなたはきっと13時にアグラ行きの鉄道には乗れませんよ。これからの旅程も鉄道のチケットを取っては、遅れている鉄道をホームで待つ、ということを繰り返すでしょう。そんなことするよりは4万円払って、確実に旅程を組んで下さい」と説得してくる。 そこで考えた。「社会人である自分の旅行の第一優先すべき目的は、きっと予定通り日本に帰ってくることである。その為には、多少の自由を犠牲にしてもかちっとした旅程を組むべきなのかもしれない。お金もないわけではないし。しかもミニバスで友達でも出来るかもしれないし、むふふ」と。かなり悩んだが、結局申し込むことにした・・・。 「そう、それがいいですよ、すぐに出発してください」と言われ、ミニバスの到着を待つ。その間、昼ご飯を御馳走になった。 ニセモノ インドにないもの、カレーライス、と地球の歩き方には書いてあったが、いきなりカレーライスが出てきた。 カレーがありライスがあれば、カレーライスがある。当たり前である。 なんだかんだ30分ほど待ち、13時ころ出発する。 ドライバーの名前はアミット。「彼が4日間あなたを案内します。最後は彼にチップを払ってくださいね。それでは良い旅を!」 !!4日間・・・二人きり!!!???ま、じ、で? しかもミニバスとはタタ製の乗用車・・・ここに二人きりでアグラ、ジャイプール、ジョードプルまでのロングジャーニーを共にするのだ。 アグラまでは何時間・・・? 「5時間くらい」 「!!!!!」激しく後悔した。独りで音楽でも聞きながら気ままに鉄道旅行した方が、どんなにか楽しかっただろう。5時間も狭い車内で、このドライバーと過ごすのか・・・しかも4日間も・・・・。 この時点で自分のインド旅行がどのようなものなるのかある程度予想出来ていた・・・・。 アグラにつくころには、日は暮れていた・・・・。 つづく