Hail against the barn door/古川本舗
Youtube聞きながらプログラミングの勉強をしていたら、やたら良い曲が流れてきたので、調べてみると『古川本舗』というユニットで活動しているアーティストを見つけました。古川本舗氏が作詞作曲、ギター、ベース、キーボードを手がけ、歌は古川本舗、ちびた、キクチリョウタの3人が曲によってそれぞれ担当するという不思議なユニットです。業界ではすでに有名で、一定の地位を築かれているよう。さすがにセンスが良い。大橋トリオ以来のヒットです。
このアルバムは昨年末に発売したものですが、めちゃくちゃ出来が良いので紹介せずにはいられません。こういうアーティストと出会えたことが本当に嬉しい。
1、21g
おそらく人間が死ぬときに21g軽くなるという話からとったタイトルです。歌詞は全部英語なのかと思っていましたが、よくよく聞いてみるとほとんど日本語です。いろんな音をミックスしまくった壮大なバックミュージックの中にささやくような美しい歌声。世界という壮大な荒波の中で与えられた命がたった21gでしかないという心細さを非常に巧みに表現しています。最後にさらりと only 42g とささやくところに大きな物語性を読み取れます。
2、ライフタイムサウンドトラック
打って変わって、ポップでご機嫌なナンバー。桑田佳祐的な言葉回しで、英語なのか日本語なのかわからないけど、とってもダンサブル。『夕方goes to dark』 なんて、すごく桑田佳祐が使いそう。メロディーの一つ一つがとても耳に残る。
3、問うてはその応え
なんだろう、すごく不思議な曲です。重厚で沈み込むようなサウンドとシンプルなメロディ、でも、唯一無比の存在感を醸し出す仕上がり。この「ちびた」という方のボーカルが聴くものに高揚感というか、浮揚感を与えます。この世とは違う世界に連れて行かれてしまうような、不思議な魅力がつまった曲。最初に聴いたときはなんともなかったのですが、聴けば聴くほど、深みにはまっていきます。
4、ナイトクルージン
曲はポップでリズミカルなんだけど、歌声は物憂げ。闇夜の海に浮かぶ、きらびやかなクルーズを象徴しているかのよう。本当に楽しんでるのか、本当に明るいのか、楽しみたいのか、つまらないのか、その中間でいったりきたりするナイトクルージン!
5、情熱と残響
Aメロが素晴らしい!控えめだけど、きっちりリスナーを引き込む出だし。まさに休符がメロディを作る、という感じ。そしてサビの言葉のセンス!「変わらない夜の闇」「放物線を描いては消える流星」という言葉がぴったりのメロディなんだ、これが。放物線と流星という言葉が持つイメージをメロディにしたら、こうなりましたっていう曲。センスの塊。
6、花と幽霊
シンプルだけど、耳に残るサビを作らせると天下一品です、非常に古川本舗らしい曲です。
7、ベロニカと黄色の靴
タイトルの世界観も絵本チックで素晴らしいけど、それと合わせてくるメロディがすごい。特に「小さなラジオの音」の部分!淡々と進んできた曲調に対して一気に広がりを与えます。全体のタッチとしては懐かし曲調なんだけど、こんなメロディ聴いたことがない。ものすごくよくできた曲。
8、coma white
ボカロっぽい、遊び心に溢れた可愛い曲。でも歌詞はちょっとドキっとする。
9、Hall against the barn door
アルバムのタイトル曲。この曲だけ、アコギだけで歌われていて、ふた昔まえのフォークソングのようです。アルバムの中では異質なのですが、非常に思い入れのある曲なのかもしれません。聴いていて落ち着きます。
10、ベイクドパンケイクス
90年代のヒット曲の王道みたいな作り。20年前なら100万枚売れてたんだろうなぁ、おしいなぁ。安定した良曲です。
11、バンドワゴン
もうこの曲が素晴らしすぎて・・・。駆け抜けるようなリズムと、ギター、焦燥と諦めとちょっとキザな歌詞、幼い歌声。自由を謳歌している青春を体現したような曲。この世界観はミスチルの「SUNRISE」、山下達郎の「ターナーの機関車」、ふくろうずの「夜明け前」の系列ですね。こういう、訳もなく夜を走り抜けるみたいな曲が異常に好きなんです、私。このメロディにこの編曲に、この言葉選び、本当にいい曲作るなぁ、古川本舗!
<blockquote>このまま夜を抜ける夢みてた 答え、まだ知らない。</blockquote>
この部分を聴くだけでもアルバム一枚買う価値がある!!!