モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

文系は作者の気持ちを考えよう

『文系は作者の気持ちでもかんがえてろよw』という痛烈な皮肉があります。理系が世の中に直線的に役に立つ技術に頭を使っている一方で、文系のバカバカしさが際立つ、秀逸な揶揄です。

 
文系と理系に分ける意味や、本当に『作者の気持ちを答えなさい』という設問が存在するのかと言った問題は、一旦横に置いておいて。このテーマを考えてみます。
 
 

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実は、生きていく上で『作者の気持ちを考える』ことほど高度でクリエイティブで肌触りの良い知性の使い方はない、と思うのです。
 

仕事で発揮される場面

まずは仕事面。どんな仕事も1人では成り立ちません。1人で何かを製作する仕事でも、その先には必ずそれを受け止める人がいる。受益者、つまりお客さんがいない仕事は仕事ではありません。
 
そのお客さんが、我々のアウトプットをどう捉え、どう評価したかを知ることは、仕事を続けていく上で致命的に重要です。相手がどう思おうと知ったこっちゃない仕事もあるにはあります。繁華街のボッタクリバーとか、観光名所のしょうもない飲食店とか、一見さんだけを相手にしているところ。でも、そんなところ遅かれ早かれ絶対に潰れます。あそこはダメだと噂が立った時点でアウト。継続して仕事をするには、お客さんに満足して貰わねばならない。お客さんが満足しているかどうかをより正確に捉えるには『作者の気持ちを考える力』が重要になってきます。
 

家庭で発揮される場面

そして家庭面。特に結婚。結婚生活の目的は『理解不能な他者に寄り添うこと』のみです。有限の会話と首尾一貫しない行動から、刻一刻と変化する相手の気持ちや体温を汲み取ることに成功したもののみが幸せを手にし、失敗したものは不幸のどん底に陥ります。(なので99.999%の結婚が失敗します。)でも、ここで『作者の気持ちを考える力』が適切に発揮されれば、少しはマシな結婚生活を送ることができるのかもしれない。
 
妻からの「おかえりー、飲み会楽しかったー?」という言葉は「よくお家に帰って来てくれたね。飲み会も楽しかったなら、私も嬉しい。また明日もお仕事頑張ってね^^」だと思っている人は国語「1」です。ゆとり教育でも絶対的「1」です。理系で研究開発しててください。「ふーん、私はこんなに大変な思いをしているのに、あなただけ楽しい思いをしているんだね、それに対してあなたは何も思っていないのね。よ〜くわかりました。このことは一生忘れないので、折に触れて引合いに出します、覚悟しておいてね。でも、そこに腹を立てていることがバレると私が小さい人間みたいになって、余計に腹立つから、今は冷静にしておいてやる」くらい汲み取れれば「3」です。それくらい結婚生活の『作者の気持ちを考える』設問は難しい。私は「1」で良い。
 

サラリーマン生活で発揮する場面も沢山

サラリーマンの出世術でも、『作者の気持ちを考える力』は超大事です。飲み会での上司の酒の進み具合から機嫌を察し、適切なタイミングで話を切り出す。よく怒られる人というのは、わざと怒られるタイミングで話をしている場合が多い。バッドニュースの報告は上司が「宝くじ3億円当てた時」や「小泉今日子とデートすることになった時」だけにしましょう。
 
会議で本部長が言った『あれをあれしとけよ』という的確なアドバイスについて、部下が質問することは許されません。なので会議の後、部長以下10人で『あれってなんだろう?』と話し合ったりします(マジで)。会社も人間で回っている組織である以上、ほんの少しの論理と圧倒的な感情で運営されています。そんな時に『作者の気持ちを考える力』が試されるのです。この時の前の「あれ」を「ポーランド」、後の「あれ」を「市場分析」と理解した者は国語「1」です。小学校でも「もっと頑張りましょう」です。勝手にポーランドで市場分析してて下さい。正解は「銀座のママに誕生日の花を送っておけよ」です。ママに花を送る際「次回、本部長にあった時には、ありがとうって言っておいてくださいね」と口添えしておけば国語「4」です。
 

作者の気持ちを考える力は生きる目的

 
『作者の気持ちを考える力』と言っても、100%他人の気持ちを知ることは原理的に不可能です。絶対に無理です。でも、前後の文脈から類推することはできる。自分に置き換えて想像することはできる。逆に言うとそれしか出来ない。つまり、論理的に類推して、感情的に想像するしかない。その両方のアプローチをしたところで、今目の前にいるあなたの気持ちを100%知ることは絶対に出来ない。でも、それを同じ人に様々な場面で100回やったら、少しはマシになるかもしれない。1000人の人にやったら、もっと傾向を掴めるかもしれない。
 
はっきり言って、無謀な挑戦です。こんな努力ムダなのもかもしれない。でも、人と人はコミュニケーションをし続けないと生きていけないし、コミュニケーションをするには類推と想像しか方法がないんだから仕方がない。そうやって失敗しまくりながら、できるだけ寄り添えるように、近づけるように、考え続けるしかないのです。コミュニケーションは生きる上での大前提であり、生きる目的です。なので、『作者の気持ちを考える力』は生きる上での大前提であり、生きる目的なのです。
 
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以上の文章の作者の気持ちを的確に表しているものを以下から選択し答えなさい。
 
A.人間にコミュニケーションは不要だ。
B.会社は非効率的な組織だ。
C.論理は感情に優先される。
D.結婚生活は辛い。
 
正解:D