桑田佳祐のコード進行の特性について
このブログで桑田佳祐の音楽について触れられていたのを読んで、私も気になっていたことを思い出しました。
たぶん、この方は音楽そのものも桑田佳祐もこよなく愛しており、音楽理論もご存知の方だと思うけど、ちょっと気になった点がありました。
まず、真夏の果実について。
通常の「真夏の果実」は転調しません。最初から最後までニ長調です。最後サビ繰り替えすところで盛り上がるから、転調したように聞こえたのかしら。
次は希望の轍について。
何より、サビがニ長調ではなくハ短調の進行になることで、夢への厳しさとそれでも突き進んでいく姿を連想させてくれる。ちなみに、ニ長調とロ短調は平行調なため、行ったり来たりすることはあるのだ
サビはハ短調じゃなくて、ロ短調ですよね。たぶんタイプミスかな。二長調のままでⅥ→Ⅲの進行とも解釈できるけど。
そもそも調律で曲を語ることについて、少し違和感を覚えます。厳密にいうと、この方もおっしゃる通り調律には響きの違いがあるので、C調はまっすぐな感じで、A調は美しい感じというのはある。でも、桑田佳祐がニ長調ばかりかというとそんなことないような気がする。
ハ長調の代表曲
「涙のキッス」
「メロディ」
「みんなのうた」
「心をこめて花束を」
「素敵な夢を叶えましょう」
「栞のテーマ」
「可愛いミーナ」
ト長調の代表曲
「あなただけを」
「慕情」
「太陽は罪なやつ」
「白い恋人たち」
「Moon Light Lover」
どれもしっとりしたものからポップなものまで色々です。ミスチルだってB'zだって二長調の曲たくさんあります。数えた訳ではないけど、世の中に存在する曲数はハ、ト、ニの順で多いんじゃないかな。単純に♯の個数順に。
私はむしろ、桑田佳祐のコード進行にある特徴を見るのです。それはⅤm7の使い方。ハ長調でいうとGm7。
「心を込めて花束を」でいうと、Aメロはじまってすぐ”子供の頃に”
「素敵な夢を叶えましょう」でいうとBメロの出だし”夏の世に咲く花火が”
「可愛いミーナ」のAメロの”涙溢れくる”
「慕情」のBメロの出だし”泣かせてStarDust”
「飛べないモスキート」ではAメロの叫び”痛みを避けるため”のとことBメロ出だし”この街のどこかで”
Vm7なんてあまり使うコードじゃないんですよ。ふつうはドミナントのⅤが使われるから。Ⅴm7ってすごい違和感なんです。結構、ドラスティックに雰囲気を変えるコードなんです。
音楽理論的に解釈すると、ハ長調でGm7を使うということは、一旦へ長調に転調したとみせかけて、Ⅱm7を借りてきていると解釈されます。でも実態はハ長調のままなのです。
ミスチルでいうと最近の「Melody」のBメロくらいでしか思いつかない。でも桑田佳祐の曲ではぱっと思いつくだけでこんなにある。こういう違和感をポップでキャッチーなメロディにさりげなく放り込んできちゃうところが桑田佳祐の天才たる所以だと思います。
桑田佳祐は日本音楽史上最大の天才の一人だと私は思っています。本当に素晴らしい作品が何十曲とある。でも、残念ながら、最近の曲は全然聴く気がしない。「さくら」を頂点に桑田佳祐、サザンの作品はどんどん小さくなっていると思っています。
またこういう尖りまくったアルバム作ってくれないかなぁ。