モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

野心のすすめ/林真理子

ちょっと前に話題になった新書です。 低位安定志向に偏った現代の若者の価値観にキックを喰らわせる指南書。 本屋の本を持ち込めるスタバで立ち読み(座り読み)。

3行でまとめると ・高い目標を掲げないことには、中くらいの達成もなし得ない。 ・一流の人間は魅力的な人ばかりだから、当然集まりも楽しい。彼らと居ると人生も楽しい。 ・一度きりの人生なんだから色んな刺激を味わいまくってやろうぜ。 ってな感じです。

はっきり言って著者のオナニー本です。彼女が自ら発信した過去の言葉、行動、後悔を”野心”という言葉で化粧し、綺麗に肯定するために書かれた本です。たしかに彼女は成功者です。地位も名誉も財も権力も手に入れた完全な勝者です。でも、その輝かしい野心の下には彼女に踏みつぶされたちっぽけな人生が何千何万と転がっていることにあまりに無自覚です。能力や才能は”私がこうしたいから使う”のではなく、”授かったものをお返しする”ように使って初めて評価されるものです。昨今の若者があまり野心でギラギラしなくなったのは、授かった能力を自分に向けて消費するのでなく、みんなに還元する形で発揮するようになったからなんじゃないかと思うのです。もうみんなとうに気づいて白けている。こんな自分自分言うオジサンオバサン達が資源を独占し過ぎてしまっていることを。そんな強欲な生を全員分満たせる資源がこの世界に存在しないということを。

この本が発売時にどかんと売れて、ぱたっと売れなくなったのは象徴的です。”やっぱり時代遅れのおばさんがまた自分の話している。こっちはみんなで助け合って生きるから”と若者に見放されてる兆候なんじゃないかと思うのです。