アントキノイノチ
大阪へ異動になり、最初の歓送迎会へ参加した日。
今までの職場の雰囲気と全然違い、すごくラフで軽い感じ。
それでも「仕事は甘くねぇぞ」と脅される感じ。
「まじめでつまんねぇやつだな」とぼそっと囁かれているような疎外感。
今の職場へ来た時もそうだった。
というかそれ以上だった。
いつもいつも新天地というのは、難しい。
新参者を快よく迎え入れる心持を常にもって働いている人なんかそういないんだと思う。僕自身もそうだったから。
なんだか、とても疲れて、心にもやもやが残っていた。
そんなときに母から「良い話だよ」と渡されたのがこの小説。
さだまさしの小説。
親友を2回殺しかけ、心に傷をもった青年が、遺品整理会社の先輩やお客さんとの心の交流や、深い傷をおったゆきちゃんとの恋愛を通して、成長していく物語。
アントキノイノチっていう軽くふざけたタイトルと思いきや、非常に重い話。
遺品整理業っていうのは最近テレビの特集でちらっとみたことがあったけど、すごく過酷な仕事。
臭くて汚くて恥ずかしい。人間の嫌な部分もいっぱい見えてしまう。
でも、その分、生身の人間に触れられる、心の深部で触れあえる、素晴らしい仕事の様なきがする。
本の中では遺品整理業での心の復調と、過去の悔恨がクロスして描かれている。
第三者の視点から見ると、「そんなのよくある話じゃん」とか「そんな小さなことで悩むなよ」と突っ込みたくなることだ。ブログがなんだ!ウソツキがなんだ!と。でも、本人にとってはそれが生死を左右するほどの大問題だったりするのだ。人間の心というのはなんて繊細なんだろうか。
まだ25歳だけど、鬱状態を2度経験したことがある僕にとって、身にしみる話だった。
松井の様な絵にかいたような悪人ならまだ憎めるけど、それが心から尊敬していた先輩だったりするから人間って厄介だなと思う。
今の状況や、過去の外傷経験、いろいろ思い出しながら読んでいたが、佐相さんの言葉が今の僕の心の緊張を解かしてくれた
おらなぁ、どんっなに汚ねえものの中にだってなあ、永島君、人間の温かい血は流れていると思うのよ。
実際生きているっつうことはなぁ、永島君、すっごく恥ずかしいことなんだに。
生きるということは恥ずかしいことだ。誰だってそうだ。
みんな恥ずかしいことを隠しながら生きている。死ぬほど恥ずかしいことが生きていれば必ず起きる。
でも、「恥ずかしくても良い、それでも、生きよう」と思えたとき、やっと強くなれる気がする。
元気の出る話だった。
人に感謝される仕事って素晴らしい!
ゆきちゃんとの清らかな恋愛模様はみていて清々しかった。
青春は良いなぁー。