モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

痴漢保険

痴漢冤罪保険というのがあるらしい。

月額590円「痴漢冤罪保険」に申込殺到 首都圏在住者に人気

男性が痴漢を疑われたとき、携帯電話やスマートフォンにあらかじめ登録しておけば、事件発生時に画面のボタンを押すだけで、登録弁護士の携帯電話やスマートフォンにメールが一斉発信され、弁護士と電話で相談できるという仕組。月額590円払えば、事件発生後48時間以内に限り、弁護士の相談料、接見費用は無料

というものです。もちろん「痴漢冤罪」に限っての話です。実際に痴漢しておいた捕まった場合の弁護士費用を負担してくれるわけではありません。痴漢はこの保険には入れません。

じゃあ逆に「痴漢保険」というのを作ったらどうだろう。痴漢して捕まった時に弁護士費用が少し安くなるという保険。もちろん冤罪の場合は適用できない。加入者は自分が本当に痴漢したという事実を弁護士に証明しなくてはならないため、彼らは全ての行動を小型ビデオカメラで撮影しなんたらかんたら・・・・

一方で「痴漢抑止バッジ」というものが普及し始めているらしい。「痴漢は犯罪です。私は絶対に泣き寝入りしません。」というワードに痴漢が怯み、付けた途端痴漢エンカウントがゼロになるという現代版「モルルのお守り」です。

もし実際に満員電車に乗っているときにこのお守りを付けている方が前に居て、自分が後ろに立っているという構図になったら・・・傍から見たら「本当は痴漢したいけどお守りによって痴漢できないヤツ」みたいに見られそうですね。そうなったら男も「そんなに疑わないでください。私は絶対に痴漢しませんよ?」というバッジを涼しい顔でつけるしかない。そういった男からの不満もあり、一部では痴漢防止バッジに批判が出ているようです。すると、男からの批判に対して女性陣は「男性側の無関心」が痴漢撲滅の弊害になっているのだ、と怒りを露わにしており、痴漢に関わる議論はよく燃え上がっています。

男性側の無関心について思ったことがあります。大学の時、仲間とだらだら集まっておしゃべりしていた時のこと、初めて当時の女子大生から痴漢の現実を教えてもらいました。私が満員電車通学をするようになって6年経ってから知った衝撃でした。

女子A「ほんっとに普通に痴漢っているよね。」 女子B「そうだよね、かなりの頻度でされるよね」

女子A「最近、気づいたんだけど、露出が多い方が痴漢されない。ミニスカで胸元を出しているくらいの方が、活発で気が強そうな女の子に見えるんだろうね。」 女子B「確かに黒髪でロングスカートの時とか一番頻度高かったかも!」

女子A「ネイルとかも大事」 女子B「出来るだけ派手なカッコをした方が良いよね」

男子校育ちの私は女性が性に関わる話をしていると言うだけで興奮を隠し切れなかったのですが、これは本当にショッキングな事実でした。だって毎日6年間満員電車に揺られてるのに、そんなに頻繁に起きる大事件について見たことも聞いたこともなかったんだから。行ってない同窓会の写真をFacebookで見るような、気になっていた女性の左手の薬指に急に指輪が嵌められていたような、そんな置いてけぼり感がありました。

これがほとんどの男性の感想なんじゃないかな。男性は痴漢に無関心なのではなくて、痴漢はその特性上、「秘匿」されているのであって、我々は知りえないのです。知っているのは被害者と加害者だけ、男性は被害者にならないし、99.999%の人は加害者にもなりません。だから、その存在すら知らないのです。見たことも聞いたこともないもの、もしかしたら存在しないかもしれないと思っているものに、人は興味を示したり、自分のリソースを多く割いたりしないものです。(UFO、宇宙人、タイムマシン、時間ストップウォッチ、ネッシー、雪男、ツチノコ、白馬に乗った王子さま、従順な女性、を除く)

痴漢撲滅のために男性からの理解や協力が必要ならば、まずは痴漢がこれだけあるんだという事実を知らしめる必要があります。昔見たアンケートでは全国600名の内、60%弱が痴漢にあったことがあると回答していました。全国のアンケートだから満員電車社会(首都圏)に生きている人が全国の50%強いると考えると(日本の人口が1億2000万、三大都市圏の人口が関東3500万、中京1000万、近畿2000万で合計6500万人。全国の55%くらい)満員電車生活をしている女性のほとんどが痴漢にあったことがあると考えていいんじゃないでしょうか。私やあなたが毎日乗っているその電車にも痴漢がいると考えた方が良い。

一気に普及した女性専用車両も効果を測量するのが難しく、鉄道会社から定量的なデータと成功宣言は出ていません。他の車両の混雑率が上がることでより痴漢に逢いやすくなったという声もあるらしいです。

痴漢問題の根本の原因は日本の鉄道が混みすぎるという点にあるのでは。鉄道会社がこのままでいいのだと考えているのが問題なのだ。痴漢が氾濫し、カバンが押しつぶされ、腰痛が悪化し、イヤホンが弾き飛ばされる空間を何の対策もなしに毎日毎日提供し続けている鉄道会社が問題意識を持つべきだと思う。一人一人の間にきちんと空間があれば、痴漢など出来まい。(出来た奴は私に言ってくれ、謝るから)

痴漢抑止バッジ普及運動も良いけど、電車の本数をもっと増やせという運動も誰かしてくれないかのう。