モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

STAND BY ME ドラえもん

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全てのドラえもん映画を鑑賞し、てんとう虫コミック45巻全て持っている私が言います。このドラえもんは素晴らしい。

話は単行本の代表的な”ラブストーリー”を繋げたものです。ドラえもんギャグマンガとも教育マンガとも科学マンガとも捉えられますが、この映画は”恋愛マンガ”という切り口で構成されています。

私くらいになると、話と関係なく、最初から最後までずっと泣いてました。ドラえもんが3Dで喋っているだけで、なんだか懐かしくって泣けてくる。のび太ドラえもんが楽しそうにしているだけでなんだか嬉しくって泣けてくるのです。のび太の部屋のサイズ感、階段の高さ、小学校の密集具合、どれもすごくリアルで、小学生を生きていた自分を追体験出来たからかもしれません。

タケコプターで駆ける夜の街、未来の東京の高速道路、高層マンションから観る天の川、小さい頃、ワクワクしながらマンガを読んで想像していたものが、この映画で現実となったのです。

原作の”雪山のロマンス”ではあんなに頼りなかったのび太が、この映画では自分で考えて、自分の力でしずかちゃんを助けます。原作を裏切る形でしたが、それもまた素晴らしかった。大人になったのび太の台詞、「ドラえもんは子供の頃の友達だからね」という台詞は切ないですが、”ウソ808”によって”ずっとドラえもんと暮らす”未来に変わったのでしょうか。

あんまり熱を込め過ぎて彼女にも呆れられてしまったので、ドラえもんに対する想いをこの場で発信したい。

まずは、ドラえもんの”教育的メッセージ性”について。よくドラえもんを引き合いにして”のび太ドラえもんに頼ってばかり”とか”何度も同じ失敗して全く成長していない”という批判をする人がいます。この映画に関してもきっとそうです。せっかく自分の力でジャイアンに勝ったと思ったら、すぐエイプリルフールでドラえもんの道具に頼る、と。でも私は、ドラえもんの教育的メッセージを”成長性”とか”自己研鑽”とかに求めるべきではないと思っています。我々がドラえもんのこれらの話から読み取れるのは”成長したと思っても、結局人間は怠け者で甘えん坊なんだよ”というメッセージだけだと思うのです。”甘えて、頼って、ちょっとだけ頑張ってみて、それでもダメで、なんとか出来たと思っても、またすぐに元の場所に戻ってしまう、結局、人間ってそんなもんなんだよ”と藤子先生は仰っているのです。もっと言うと、成長だの、努力だので一人で生きた気になっている人は傲慢なのです。誰だってドラえもんに頼りながら、寄り添いながら、誰かと共に生きていたいのです。あなたが使っているスマホだって、車だって、テレビだって、自分ではどうやって動くかも、どうやって作られているかも知らないのですから、結局は”ドラえもん”的な誰かから貰った秘密道具に過ぎないのです。あなたもわたしもドラえもんと一緒じゃないと生きていけないし、助け合って仲良く寄り添って暮らせる友達や家族と一緒にいられれば、ダメなのび太のままでも良いんだよ、それだけで充分幸せだね、とそう優しく教えてくれる気がするのです。

もう一つ、ドラえもんの世界の科学技術について。映画でのび太が未来にいくのは、16年後でした(たしか)。16年後の東京は、車が空を走り、緑溢れる高層マンションが建ち並び、高速道路にエレベーターやら洗車機やらいろいろついた、ワクワクする街になっていました。でも、もうドラえもんの話が生まれてからとっくに16年経っているのです。いや、36年くらい経ったのかな。たしかにiPadみたいなカッコいいガジェットは出ましたが、まだ車は空を飛んでいない、あんなに夢溢れる東京はここには、まだない。むしろ、そもそも、そんなにこの世界が発展していくような気がしない・・・というのが実感されて、凄く悲しかったのです。小さい頃、夢見た未来都市東京はここにはないし、空飛ぶ車は世界中どこにもない。どこでもドアもタケコプターもタイムマシーンも全然発明される気配がない。だって光速を超えるのは不可能だし、地球の資源は限りあるし、天災はいつでも文明に襲いかかるんだから、マンガの世界が現実になるわけない!当たり前だ、そんなもん。でも、自分が大人になった頃はそれに近いものが出来ているのかもしれないという、あのワクワクを思い出したら、少し寂しくなったのです。ドラえもんを観て育った人なら、この感覚分かってくれるでしょうか。

”すべての子ども経験者のみなさんへ”というキャッチコピーは秀逸です。まさにそんな映画です。子供の頃に夢見ていた世界を圧倒的なリアリティを持って目の前に差し出してくれる映画です。そこで、今自分が生きる世界を見渡してみると、少し寂しくもなりますが、まだまだやらなきゃいけないことがあると内から力が湧いてきます。

また夢を忘れそうな時に、続編を作って欲しい。きっと子供にも見せたい。