モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

眠れなくなるほどの面白本『ワイルド・ソウル(上)』/垣根涼介

久しぶりに夜寝るのも惜しいほどの面白い本と出会えました。垣根涼介の『ワイルドソウル』!!

戦後、日本政府が進めた中南米諸国への移民政策の暗部を抉る社会派かつエンターテインメント性も兼ね備えた小説です。

当時の日本政府は、田舎の農村部を中心として中南米への移民を募集しました。日本とは比較にならないほどの広大な農地、肥沃な土壌、競争相手の少ない米、野菜市場、既に整った住環境、を餌に集めたキャンペーンは驚くほどの成果をあげ、2万人以上が大きな夢を掲げて太平洋を渡りました。しかし、日本政府が提示した条件は、完璧な嘘でした。日本移民達をのせた船がたどり着いたのは、何もないアマゾン、住環境どこりか道すらない。前人未到のジャングルそのままだったのです。野菜など育たない強酸性の枯れた土壌。中和した土を全て洗い流してしまうスコール、野菜を必要としない食文化を前に、大農場主となる夢などくだけ散ります。さらに、マラリアアメーバ赤痢の病気が移民達を襲い、次々と婿の民が命を落としていきました。日本領事館に手紙を送っても何の音沙汰もない。この怒りをどこにぶつけたらいい。 この物語は、国家に裏切られ、棄民となった彼らが地獄から這い上がり、復讐を果たすまでを描いています。

息つく暇もないほど、どんどんストーリーが展開していくので全く読者を飽きさせません。歴史の表には出ないけれども、こんなに悲惨な目に会った人達がいたのかと思うと、胸が熱くなります。彼らがアマゾンで奮闘する描写は日本人必読だと思います。

まだ、上ですが、下もすぐに読み終えそうです。