モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

評価と贈与の経済学/内田樹、岡田斗司夫

また内田先生の本ばかり読んでいます。面白いので、ついつい読み進めてしまうのです。今回も対談本です。評価経済の提唱者として話題になった岡田斗司夫さんと。”デブだったけど痩せた人”くらいの認識しかなかったのですが、オタク界では有名な人らしく、なるほどもの凄い頭のキれる方です。あの内田先生に対して、反論したり、持論を納得させたりする説得力は見事です。以下、面白かったところを紹介します。

P56 内田 「努力した分についてすぐ報酬をよこせ」「苦労していい大学に入ったのに就職がないのは理不尽だ」って言っている人は結局「努力した人はどこかで最後に報われる」っていうことをほんとうは信じていない。ほんとうに信じていたら、努力してなかなか報酬がやって来なくても、「そのうち、いいことあるよ」って思っていられるはずでしょ。ちょっとやって、「あ、来ない」って怒り出すやつは努力と報酬の原理的な相関をほんとうは信じていないんだよ。中略、いま若い人に一番足りないのは「努力あるいは才能に対する報酬は、いつか必ず来る」っていう事に対しての素直な信仰だと思う。これだけ努力したんだから、遅滞なく報酬をよこすように、納品したらすぐ金払え「キャッシュオンデリバリー」っていうのは、要するに相手を信じていない人間の言いぐさだからね。

なるほど。その通りだと感心してしまいました。あんなに勉強していい高校入って、良い大学入ったのに、今26歳にもなって、こんな給料。工場と寮の往復だけの毎日で、現場のうるさいあんちゃんたちに紛れて安い寮の飯を食って、汚い共同風呂に入って寝る。なんじゃこりゃ、と毎日不満を募らせている自分には、上の言葉は強く心に響きました。確かに、給料は安いけど、そのことを社会や会社のせいにしても仕方ないですね。今は、これまでやってきたことと今でもやっていることがいつか楽しい事に繋がるんじゃないかと思い続ける方がよっぽど心に優しいです。

p97 岡田 じゃあ、いくら六十が近くなってきた、しんどくなってきたからといって、内田先生、文筆をやめると言い出すのはいけないのではないでしょうか。

もう大勢に向けて書く仕事はしたくないと前半部で言う内田先生。その後、才能は天から与えられたものであるから、人類共通の財産として世のために奉仕すべきであると内田先生が言った時に、岡田さんから、この一言です。これには内田先生もタジタジ、反論の余地なし。これからも書き続けてほしいです、人類のために。

p128 内田 だって、掃除してもすぐまた汚れるから。一時だけなんですよ、きれいなのは。掃除した次の瞬間から汚れはじめてく。世界に無秩序が乱入してくるのを必死に防ぐんだけども、押し戻したはずの無秩序はすぐ戻ってくる。人間の生きる世界で、人間的な秩序を保つというのはエンドレスの作業なんだけど、お掃除していると、その宇宙の心理に目覚めるわけ。

驚天動地の洞察ですね。この発想はなかった。掃除の無意味性に宇宙の心理を見いだせるために、教育として掃除をさせるべきというお話。確かに、掃除ほど費用対効果の低いものはありません。どうせ汚れるんだから、という発想の人は絶対に掃除をしないもんね。どうせ、汚れる。どうせ無意味になる。それでもやる事に意味がある。これは哲学であり、芸術です。無意味にも関わらず、結果を伴わない達成感を味わえるのも掃除の神秘ですね。

p213 岡田 でもぼくは大学はいらないと思ってるんですよ笑     内田 いりますよ!あなたのような人が大学を壊したんだな笑     岡田 なんで塾の大きくなったものが都会の真ん中にドンと構えているのかがわからないんです。まともな先生は塾を開いて自分で食べてくださいよ。正直、大学が何で必要なのか意味わかんないんですよ笑中略、授業料だって年間三十万円くらいでいいはずなのに、なんで百万円以上もするんですか。間違ってますよ。     内田 確かに私学は取り過ぎかも笑。それは認めます。大学の教員は好きなことしていいから、その代わりに給料が安いよ、というので良いと思う。そうしたら貧しくてもいい、大学で働きたいという人しか来ないでしょ。

内田先生にここまで言う人初めて見ました!しかも一部認めさせてるし!!岡田さんのおっしゃる通り、あんなに授業料が高いのはおかしい。看護師の専門学校だって年間三十万円くらいで行けるのに、文系の大学がなんで八十万万円とかするんでしょう。大学教授に潤沢な資金を与えて、知的イノベーションを促進させるためでしょうか。権威もあるし、給料も良いから大学教授になろうと思う人が多ければ多いほど、切磋琢磨してアウトプットも高まるのでしょうか。でも継続的に一つのことを続けるためにはやはりその対象が”好き”でないといけないと思うので、好きであれば給料や権威など与えなくてもやれるんじゃないかとも思います。だから、やりたい人が塾を開くという世の中になれば、いろんな分野の研究が身近に感じられる世の中になり、面白くなりそうですね。

p235 岡田 女の子によく言ってあげるんです。「家に帰ったら九十九パーセントが赤ちゃん言葉なのをよく知っておくように!もし君の彼氏がそうじゃないんだったとしたら、そいつは我慢しているだけだ」って。

・・・ごくり。まさか皆もそうだったとは!!

他にも常人ではついていけないペースで次々と議論を進めていっていますので、自分の知性を躍動させたい時に読むと、とても効果的な気がします。岡田斗司夫さんってすごく面白い人だと分かったので、他の本も読んでみます。