モフモフになれたら

本と映画と仕事と考えたこと

人文科学

新自由主義の病につける薬! 『武器としての「資本論」』 白井聡

この2年くらい何故か本を読む気にならなかったのは、どの本にも現状の課題を解決する方法が書いていないどころか、本当の課題が何なのか、というところさえ的はずれな気がしたからです。 私はただのサラリーマンなのですが、私が日々感じている課題は、他の…

人は死んだ  『サピエンス全史』『ホモデウス』 ユヴァル・ノア・ハラリ

人は死んだ。この言葉が頭に浮かんだのは、話題の本「サピエンス全史」とその続編とされる「ホモデウス」を読んだからです。ここまで価値観を揺さぶられたのは大学時代にカールポパーの科学哲学に触れたとき以来です。どうやってこの感動というか、動揺を伝…

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義作者: シェリー・ケーガン,柴田裕之出版社/メーカー: 文響社発売日: 2018/10/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る最近、新発売の棚に並んでる本書。死に関する本は結構読…

久々の面白本『人口減少社会の未来学 内田樹編』

内田樹先生が編者となって、各界の論客を集めた論集です。様々な角度から人口減少について考察されており、大変面白い本でした。各者の論旨のポイントをまとめておきます。内田樹 「人口減少社会の到来は目に見えているのに、喫緊の論件になっていないことが…

ローカリズム宣言「成長」から「定常」へ 内田樹

ローカリズム宣言―「成長」から「定常」へ作者: 内田樹出版社/メーカー: デコ発売日: 2017/12/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るあんなに勢いのあった内田先生も最近は本当に落ちぶれてしまいました。本を一冊読んでも「なるほ…

ハンナ・アーレント「全体主義の起原」 100分 de 名著

ハンナ・アーレント『全体主義の起原』 2017年9月 (100分 de 名著)作者: 仲正昌樹出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2017/08/25メディア: ムックこの商品を含むブログ (6件) を見る学生時代に読んだハンナ・アーレントの「全体主義の起原」。心の奥底に突き刺…

何度でも読み返したい漫画 マンガで分かる心療内科 アランの幸福論編

このシリーズ大好きです。今回も目から鱗の連続でした。マンガで分かる心療内科 アランの幸福論編 (ヤングキングコミックス)作者: ソウ,ゆうきゆう出版社/メーカー: 少年画報社発売日: 2017/04/24メディア: コミックこの商品を含むブログを見る 人間が人間に…

勉強し過ぎてキモがられてる人のための勇気の書『勉強の哲学 来たるべきバカのために』 千葉雅也

読みやすくタメになる本です、勉強の哲学 来たるべきバカのために作者: 千葉雅也出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/04/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (21件) を見る P20 勉強とは、かつてのノっていた自分をわざと破壊する、…

極め過ぎて可憐なニーチェ本 『過酷なるニーチェ』 中島義道

過酷なるニーチェ (河出文庫)作者: 中島義道出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/11/08メディア: 文庫この商品を含むブログを見る今日本でもっとも峻厳な哲学者といえば、中島義道かもしれません。このニーチェ入門書はニーチェの言説の一文を抜き出…

嫌いなあの人を少し好きになる本『私とは何か 「個人」から「分人」へ』 平野啓一郎

良本の定義は「今まで知らなかった世界の見方を提示してくれること」です。良本を読む前と後では、まわりの世界が一変します。大袈裟ではなく。一変するものです。 そういう意味でこの本は素晴らしい良本です。 私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社…

無意味な無限論に終止符を!『無限論の教室』/野矢茂樹

無限論の教室 (講談社現代新書)作者: 野矢茂樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/09/18メディア: 新書購入: 24人 クリック: 198回この商品を含むブログ (167件) を見る 野矢茂樹先生の無限論講座です。文系大学生がへんてこな先生から講義を聞いていると…

ニュースのなぜ?は世界史に学べ 日本人が知らない100の疑問

ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ 日本人が知らない100の疑問 (SB新書)作者: 茂木誠出版社/メーカー: SBクリエイティブ発売日: 2015/12/05メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る世界情勢を分かりやすく語ることってとても気持ち良いんです。あぁ…

悩める人、いらっしゃい 内田樹の生存戦略

悩める人、いらっしゃい 内田樹の生存戦略作者: 内田樹出版社/メーカー: 自由国民社発売日: 2016/06/10メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る内田樹先生のお悩み相談教室なんですが、なぜか政治の話が多いです。安倍政権はどうですか…

危険思想ギリギリの素晴らしい本『幸せになる勇気』 岸見一郎

本当に素晴らしい本です。素晴らしすぎて誰にもオススメしたくないくらい。最近、この本に書かれていることしか喋っていません。飲み会で仕事の話になった時も、結婚の話になった時も、家庭でお金の話になった時も、すべてこの本の考え方をモチーフにすれば…

存在と時間 哲学探求1 永井均

存在と時間 ――哲学探究1作者: 永井均出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/03/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る学生時代、ウィトゲンシュタイン入門を読んだことがあり、名前だけは知っていた永井均。この人の問題意識にひたすら付き…

「読まなくてもいい本」の読書案内 ――知の最前線を5日間で探検する /橘玲

分野横断的に知の最前線を覗ける良本です。テーマは複雑系・進化論・ゲーム理論・功利主義等。知の歴史を辿りながらどんな議論がなされてきたか臨場感を持って体感できます。「読まなくてもいい本」と言われると、逆に読みたくなるのが人の性というもので、…

アドラーの心理学 嫌われる勇気

話題になったのはもう2年前なのでしょうか。本屋でいつも大きく宣伝されていたのですが、タイトルに魅かれなかったので手に取ることはありませんでした。だって「嫌われる勇気」という本をタイトル買いするということは、”今は嫌われる勇気がない→みんなに好…

あの根源的問題について⑥ ハイデガー=存在神秘の哲学/古東哲明

「次はハイデガーに迫る」と書いたエントリーからもうすぐ一年が経とうとしていますね。ハイデガーの本は、1月時点ですでに読んでいたのですが、なかなかまとめるのに骨が折れそうだと思い、保留にしておりました。もう年末ですし、年初に掲げた課題はここ…

困難な成熟/内田樹

最近仕事を抑え気味の内田先生。いつも「誰も言わなそうなこと」を選択的に語ってきた内田先生ですが、最近は「誰も言わない」が正しいことではなく、「誰も言わない」不確かなことを語るようになってきた気がします。この本でも、かなり極端な語り口が多く…

文系の壁/養老孟司

最近、何を読んでも面白くなくて途中で投げ出してばかりです。こういう時は内田先生の本を読むに限るのですが、最近活動を自粛されてか本もあまり刊行されないので、養老孟司さんの本を手に取ってみました。 活躍中の4人の理系出身者との対談集。 どの対談…

あの根源的問題について⑤ 仝/佐々木中

仝: selected lectures 2009-2014 (河出文庫) 作者: 佐々木中 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2015/02/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 佐々木中のスゴイ本です。「ドウ」と読みます。2009〜2014までの講演を編集文庫化したも…

孤独の価値/森博嗣

幻冬舎新書が来てます!2冊連続! 最近、”孤独”について考えることが多く、ちょうどこんなタイトルの本があったので読んでみました。 この本が説く”孤独の価値”とは単純明快。孤独な時こそ、人間の創造性が最大に発揮される、という点です。どんな発明も、…

愛するということ/エーリッヒ・フロム

愛するということ 作者: エーリッヒ・フロム,Erich Fromm,鈴木晶 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 1991/03/25 メディア: 単行本 購入: 33人 クリック: 227回 この商品を含むブログ (120件) を見る 『自由への逃走」で有名な社会学の大家フロムの『愛…

弱いつながり 検索ワードを探す旅/東浩紀

弱いつながり 検索ワードを探す旅 作者: 東浩紀 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/07/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (41件) を見る また東浩紀のエッセイです。なんと「今の自分を変えたい人のための自己啓発本」です。この本で、東浩紀は…

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル/東浩紀

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル (講談社文庫) 作者: 東浩紀 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/12/15 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る 日本の現代思想の第一人者、東浩紀の思想書ではなく、エッセイです。エッセイといっても…

あの根源的問題について③ 反哲学入門/木田元

反哲学入門 (新潮文庫) 作者: 木田元 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/05/28 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 45回 この商品を含むブログ (46件) を見る 死を考えるシリーズ3回目。前回、「死を考える鍵は世界を主体/客体の二元論を相対化し、克…

あの根源的問題について②『どうせ死ぬのになぜ生きるのか/名越康文』

死を考えるシリーズ2回目。この本は紀伊国屋のメルマガで発売の連絡があり、まさにこれだ!と思い即買いしました。 P16 どうして僕らの悩みや不安を振り払っても、振り払ってもなくなることがないのか。それは結局、そうした具体的な一つひとつの悩みの根底…

街場の戦争論/内田樹

発売と同時に買い、すぐに読み終えていたのですが、なかなか手が付けられませんでした。というのも、『街場の戦争論』出版記念講演会が先週の日曜日に梅田のグランフロントで開催されまして、それに参加する前と後では印象が変わるかもしれないと考えていた…

呪いの時代/内田樹

月1冊を超えるペースで本を出し続けている内田先生、さすがにTwitterでもお疲れの色を見せておりました。この本は2008年から震災後くらいまでのエッセイをまとめたもので、結論としてはいつもと同じことを言っているのですが、この本は非常に面白かったです…

逃げる中高年、欲望のない若者たち/村上龍

なぜか本屋さんで目が合ってしまいました。村上龍の本は読んだことがないし、好きでも嫌いでもありません。カンブリア宮殿で、結構表面的な質問ばかりする人だなという印象しかなかったのですが、文章はさすが。他人の内臓を抉り出す様な切れ味鋭い言葉が続…