竜が最後に帰る場所/恒川光太郎
外れのない恒川光太郎の短編集です。昨年出された文庫本なのですが、未読でしたので『スタープレイヤー』の余韻冷めやらぬ中、これも一気読みしました。
リアリズムから神話世界へ拡散していく5章。
日常の中にふと紛れ込む不思議な感覚を描いた序章『風を放つ』 リアルな世界の中でマンガ的世界が浸食していく『迷走のオルネラ』 これぞ恒川ワールド。日常世界と幻想世界の彷徨を描いた『夜行の冬』 日常世界をバラバラに解体し、予測不能の超世界へ誘う『鸚鵡幻想曲』 人間のいない神話の世界を描いた『ゴロンド』
どれも読み応えありますが、やはり一番恒川光太郎らしい『夜行の冬』が好きです。夜には地獄の闇の魔物と白い骸骨のガイドさんとの夜行、朝になればいつもの日常風景を生きていく主人公。このコントラストが読者の感性を揺さぶり、我々を幻想世界へと導いてくれる様な気がするのです。
本当に天才ですね。