疾走
- 疾走/重松 清
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重松清の『疾走』を読んだ。
なんか、心にガツンとくる小説を読みたかった。
この小説の一番の特徴は「おまえ」を一人称のように使うところだ。
主人公の心情の機微を「おまえ」で語ることが、果たしてできるのか・・・。
最初はものすごい違和感を感じる。
読者を突き放す感じ。
高圧的な感じ。
でも、その文体にもすぐに慣れる。
物語の最後に、なぜ「おまえ」なのかが分かる。登場人物の神父さんが語っているからだ。
でも、おそらくこれは後付けなんじゃないかと思う。
二人称でそこまで感情を表現することは絶対できないから。
このままじゃ、よくわからない視点のまま終わってしまうから、つじつま合わせで神父にした、気がする。
この物語は「おまえ」の視点はなんでも良かったんじゃないか。
「ひとり」が通底するテーマであるこの小説の中で、一人称の代わりに二人称を使っている、それだけで、このテーマの答えになっているから。
性描写もやりすぎだし、主人公は運が悪すぎる・・・
でも、かなり引き込まれる世界観。
「おまえ」の視点は文学史に残る試みだったのではないか。