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ゲーデルの哲学

ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)/講談社
¥777
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本棚を片付けようシリーズ2弾! 大学3年生くらいに買った気がするこの本。 僕の夢の一つに「不完全性定理を理解する」というのを掲げているので、その達成への第一歩です。 この本は不完全性定理を扱った本というよりは、題名の通りゲーデルの哲学に焦点を当てた本です。 ゲーデルの一生と、生き方の紹介を通して、不完全定理を含む、彼の独創的な哲学を説明してくれる本です。 ただ、数式は一切でてこないので、入門書の入門書。入口までの生き方が書いてある地図くらいの軽い本です。 不完全性定理の簡単な説明をします。丁度素人の浅い理解での説明ですので、間違いがあるかと思いますが、娯楽だと思って、ご容赦ください。 不完全性定理とは・・・真理を証明するシステムSのすべての証明可能な命題が真であり、すべての反証可能な命題が真でないとき、Sを「正常」と呼ぶ。Sが正常であるとき、Sは不完全=全ての命題が決定可能ではない。Sが正常であるとき、Sは自己の無矛盾性を証明できない。 例えば、嘘つきと正直者しかいない村があるとします。村人Aが嘘つきか正直者かを確かめるには、その証言の内容を確認すれば良いのです。「今日は晴れだ」と言ったら、空を確認すれば、その命題が真か偽か分かります。しかし「私は嘘つきだ」と発言したらどうするか。嘘つきだとしたら、発言は真だから、正直者になる。正直者だとすると証言が嘘になる・・・この証明不可能な命題がゲーデル命題と呼ばれるものです。この命題の真偽を決定する方法がこのシステムの中にない。村のどこを探したって証明も反証もできません。空を見たって、実験をしたって、勉強をしたって、どうひっくり返っても、真偽の決定が不可能なのです。 ゲーデルが証明したのは、この嘘つき村のパラドックスがどんなシステムの中にもある、ということです。これによって完全な数学理論という夢が崩れ去りました。 真か偽かを決めるにはあるルールに照らし合わせなければなりませんが、そのルール自体に対する命題については、真偽を決めることは原理的に不可能、なのです。 落書きするな、と書いた落書き 憲法改定禁止と策定された憲法、など プログラミングをやっていると少しイメージが湧きますね。 アルファベットと数字で記述するプログラムにユーザーがメッセージを入力できるとする。 そのメッセージ自体がプログラミングの記述とみなされ、バグが起きる。。。もしくはウィルスだったりする。 そうならないようにメタ言語というルールがあります。 この嘘つき村のパラドックスも自己言及に関してはメタ言語として別のルールを取り入れれば、この混乱からは回避されます。ただ、メタ言語ルールの次元でも、同じパラドックスは置きますので、無限ループです。 もうひとつ面白いパラドックスを紹介します。 有名な抜き打ちテストのパラドックスです。 教授が出した条件 ①月曜日から金曜日のどれかにテストを行う ②どの日にテストをやるかは当日になるまでわからない この条件から聡明な生徒Aはこのような結論を出します。 もし、木曜日までテストを行わなかったら金曜日にテストをやると分かる。すると②と矛盾する。したがって、試験は木曜日になる。だが、それは水曜日に予見できる。それを繰り返していくと・・・試験は出来ない! そして、金曜日。余裕しゃくしゃくに構えていた生徒Aをしり目に、教授が突然、試験をすると言い出しました。 生徒A「どうして試験をやるんですか。試験は不可能なはずです。だってどの日にやるとしても、前日には分かるんですから。」 教授「何を言ってるんだ。君は今日試験をやると分かっていなかったじゃないか。」 ちゃんちゃん。と大体ここで話は終わるんですが、続きがあります。 生徒B「教授!私は教授がそう言って、今日試験をすることを前から分かっていました!」 教授「なに?それでは、試験は中止だ。」 生徒C「教授!私は生徒Bがそういって試験が中止になることが分かっていました!」 教授「なに?それでは試験が出来るな。」 生徒D「教授!」 教授「なに?・・・ と続いていくわけです。 なんでこんな厄介なことになるかと言うと、教授の出した条件①と②が初めから矛盾しているからです。 ①が真ならば②は偽になる。厳密に言うと、①を信じるならば②は偽になる。②を信じるならば①が偽になるのです。 あなたが神の存在を信じる時に限って、神は存在しない。 と同じ構造を持っている深遠なゲーデル命題なのです。 まぁ、こんな感じです。 不完全性定理の深遠さの入り口の案内図くらいは読めたのでしょうか。 まだまだ世の中分かんないことだらけです。長生きする甲斐がありますね。