大数学者の軌跡を辿れる『数学ガール フェルマーの最終定理』
数学ガール2作目です。 今回から、主人公の姪であるユーリも仲間に加わり、数学ワールドが萌えで満たされます。この姪っ子の語尾が「にゃ」になってるのも、明らかに狙い過ぎて不気味ですが、内容は相変わらず分かりやすく面白かったです。
サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』を読んだ時、どれだけの数学者達がこの一見簡単そうな証明に命をかけてきたかを知り、手に汗したものです。ただ、その証明がいかに複雑怪奇なシロモノなのか、数式が書いていなかったのでイマイチ分かりませんでした。
でも、数学ガールなら、複雑な証明を端折り、与えられた前提だけを追いかけるだけで、素学者の軌跡を追いかけている気になれます。
こんな感じ。
フェルマーの最終定理 3 以上の自然数 n について、x^n + y^n = z^n となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせが存在しない
前提①xp+yp=zpを満たすp,x,y,zが存在すればフライ曲線も存在する。x,y,zは自然数pは3以上の素数
前提②フライ曲線は楕円曲線の一種である。
前提③フライ曲線はモジュラーではない。
未証明 【谷山、志村予想】すべての楕円曲線は、モジュラーである
この谷山、志村予想を証明すればフェルマーの最終定理を証明したことになります。なぜか。
証明
1、背理法を使います。フェルマーの最終定理が成り立たないとすると、①からフライ曲線は存在する。
2、②③からフライ曲線は楕円曲線でかつモジュラーではない
3、谷山、志村予想から、楕円曲線はモジュラーである
4、 2と3は矛盾するゆえ、”フェルマーの最終定理が成り立たないとする”前提が間違っている。ということは、フェルマーの最終定理は成り立つ。
楕円曲線とモジュラーの定義についても本書ではしっかり説明してありますので、ご安心ください。 オイラーの公式についても、中学生にも分かる様に非常に簡潔に書いてあって、数学の美学を学ぶには十分な内容です。
やはり数学ガールシリーズは面白いです。